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用語集

 特性対応型業務配置による理想的な職場づくり

第3回業務量と就業契約を明確化し仕事と給料のアンバランスを解決

医療法人社団成仁
成仁病院
渉外・保健部長
田中直美

 

■自信を持って判断できる
 救急対応システム<本文>最終回となる今回は、「適正別機能別業務分担」を精神科救急要請全数対応を例に当法人の特徴的なマネジメントを紹介してみようと思う。
また、このシステムを後押ししている、当院の人事考課についても触れてみたい。
精神科救急要請対応とは、救急隊から当院に直接連絡があった精神科事例への対応のことを指す。
月に100~120件程度の要請があり、転帰は図1のとおりである。
精神科に特徴的なものと言えるかもしれないが、「寂しいから、不安だから」「薬を多めに飲んだ」などの訴えを傾聴したり、自宅療養の助言をするだけで患者さんが安心し、要請を自ら取り下げるケースがある。
そのため要請の3割は電話相談で終了する。当院の救急対応は以前に述べたとおり、トリアージ表に沿って行うことを基本としている。
また、前回お話した一連の業務分担と同じように、トリアージも「ベーシック」、「プライマリー」、「セカンダリー」(救急の場合は医師のセカンダリー部分が対応)に分け、カテゴリーごとに判断の範囲を定めている(図2)。
判断する範囲を明確にし、個人に責任を押し付けない運用を徹底しているため、混乱は少ないと言える。
これが、職員がビクビクせずにトリアージができる秘訣だと思っている。
実際のトリアージ表では、要請のあった患者さんを精神症状や身体状況、背景、経済状況などのファクターごとに評価し、5段階に分けている。
病院のベッドの利用状況や介護量などを勘案してその時点のトリアージラインを決定し、それに基づいて患者さんの処遇を決めている。
ファクターごとの評価では、「この患者さんにはどんな治療が最も良いか?」を最優先に考えているので、あえて自宅療法(電話相談のみで終了)や他科受診をすすめることもある。
職員が自信を持って判断でき、なおかつ現実的な救急対応ができるシステムがあるからこそ、全数対応ができると言えるだろう。

 

■外来手当や受け持ち手当など
 多様な手当も準備人事考課は、当院では年に3回実施している。
考課の視点は、「働きに見合った給料か」「目標の達成度はどのくらいか」であり、決して目新しいものではない。
だが、ほかと大きく異なるのは、「全体の職員の何番目に仕事ができるか」といった相対評価ではなく、設定された目標に対し個人がどれだけ達成したかを評価する、絶対評価を用いていることである。
「職員個人がどう働いたか、あるいは今後どう働くつもりか」が当院での人事考課のすべてだ。
この「働き」に対する評価は、職員一人ひとりと結んでいる就労契約の内容によって基準が変わる。
たとえば、効率性を追求するベーシックでは、業務ごとに規定時間内に求められる業務量を100としてその何割の仕事をするか、ということを基準としている。
120の業務を行うという契約をすれば給料は高くなるが、その分厳しく、忙しい毎日が待っている。
反対に、70くらいの業務量で契約をすると仕事は楽になる半面、給料も安くなる。
人事考課においては、契約に対する履行の度合いを見極めることが重要になる。
当院では120の業務量で契約した職員が100しかできていなければ業務量不足と判断され、70の業務量で契約した職員が90の働きをすれば、20評価が上がる、という仕組みになっている。
職場で不満のもととなるのは、「あの人は給料が高いのに仕事をしない」などといった、仕事と給料のアンバランスが引き金になることが多い。
当院で用いている仕事量と給料が比例するという契約は、わかりやすいため、本人が自分の給料に納得できるうえ、職員間での揉めごとの回避にも寄与している。
また、仕事量と給料が比例するという視点では、通常の給料以外にも表2のようなさまざまな手当を設けている。
通常よく見かける夜勤手当のほかに、夜間救急手当や外来手当、受け持ち手当などがあり、これらの手当ては一定の業務量を超えた対応を行ったときに支給される。
どんな業務料の時に手当が支給されるか、判断の基準をわかりやすくしていることがポイントだ。
加点評価を取り入れ、さらに職員が仕事はできることのみを行うとしても、それが給料体系に反映しなければ意味がない。
当院では、業務量と就業契約を明確にしたうえで、多様で現実的な手当を設け、業務体制の課題を解決している。

 

■業務の一般化を推進し
 真の患者ニーズを探る3回にわたって当院の特徴を紹介してきた。
最後に、現時点での問題や今後の課題も伝えなければならないとは思うのだが、はっきり言って問題は思いつかない。
個人の持つ能力に注目して業務を展開していくと、そう大きな問題というのは起こらないものである。
強いて課題をあげるとするならば、「個別性がある」と思い込んでいる業務をさらに一般化していくことにある。
できるものを一般化しつくした後に残った個別性がある業務こそが、患者さんの真のニーズとして明確にされていくものだと思っている。
開院3年目、当院はまだまだ変化の真只中である。今後の変化にも注目していただければ幸いだ。

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