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用語集

単科精神科病院における救急トリアージシステムの構築

【演題】単科精神科病院における救急トリアージシステムの構築

野本奈美子1、片山成仁1 2

1医療法人社団 成仁病院、2東京医科大学精神医学教室

【著者名・所属】医療法人社団 成仁病院 救急看護師長 野本奈美子
【研究の目的】救急トリアージシステムの構築・導入により救急要請患者情報を多面的にアセスメントする。
【目的の背景】
・精神疾患の患者に関しては、疾患の特性上、仮に身体症状があっても処置・検査介入が困難な場合が多い。また抱える社会背景も複雑な場合が多い。以上の理由から、要請患者の身体・精神・社会背景の情報を多面的にアセスメントし、安全・迅速に対応するため、独自のトリアージシステムを構築・導入した。
・救急要請の対応困難事例を分析すると、精神疾患患者もしくは精神疾患に起因する症状を訴える要請リピーター群=人格圏・自傷行為・アルコール関連の患者が長時間救急車を拘束し、真に救出が必要な現場への出動を妨げている。これらリピーター群に対し、行動療法を課し、次回からの頻回な要請を防止する。
【方法】
・トリアージ専門NSの設置
・救急インテークカード・様々な状況設定したIC入り受電モジュール導入
・意識障害、身体、精神、家族力、経済力、社会支援、介護力、対応注意要素の8つのカテゴリをトータル判定する救急ステータスシートの導入
・病院資源に応じた受け入れ基準の目安として、○・△(+)・△・△(-)・×の5段階のトリアージレベル設定
・治療介入の優先順位判定のため、意識障害・身体症状を専門科毎に分類した身体疾患予測アセスメントシートを導入
【救急トリアージの対象】
・救急車、警察、役所、他医療機関、福祉からの受け入れ要請患者。
【倫理的配慮】
・個人が特定されないように配慮し、厳重なデータ管理を行う。
・演題の発表にあたっては倫理的に十分配慮され、対象のプライバシーの保護に留意し、当院の倫理規程等を遵守する。
【結果】
・救急受電件数のUP(期間;H20年5月1日~H21年5月31日。1年間で3.09倍の増)
・要請リピーター群;計132件に対し、行動療法を実施。
・総受電件数1933件。入院805件、外来604件、他科(身体)搬送32件、行動療法132件、電話のみ(相談・救急要請取り下げ)311件、その他(受電中に他受け入れ先が決定、警察保護など)49件、御断り0件に振り分けられた。つまり、救急ステータスシートによるトリアージ判定により100%振り分けができた。
【考察】
救急要請患者の多様な情報を多面的にアセスメントする過程から、トリアージレベルとして設けた段階毎のパターン(組み合わせ)が確立できた。つまり、○×パターンに関して言えば、その対応までが標準(ベーシック)化できるということである。△パターンは、様々な条件設定が必要になるため、より個別性に応じたいわゆるプライマリー的対応が求められることがわかった。今回得られたトリアージレベル毎のパターン(組み合わせ)を元にシステムのIT化をはかり、より機能的(プライマリ・ベーシック的)な情報分析・判定・対応につなげていきたい。

 

発表用スライド

統計資料

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